全身性エリテマトーデスと大腿骨骨頭壊死との相当因果関係

(7) 今日において確立した医学的知見によれば、「全身性エリテマトーデス」は、いわゆる難病に指定されている疾患で、免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患であり、成因は不詳であるが、治療はステロイド剤の投与が不可欠とされ、ステロイド剤の長期連用にみられる副作用として、骨粗鬚症、大腿骨骨頭壊死等の発症が知られている(大野良之他編著「難病の最新情報」・南山堂発行)。
 また、成人の大腿骨頭の無腐性壊死、阻血性の壊死を来す疾患で、原因の明らかでないものが「特発性大腿骨頭壊死」と定義され、いわゆる難病に指定されている疾患であるところ、ステロイド剤の投与歴、アルコール多飲歴が壊死発生に深く関連していることは間違いないが、その壊死発生機序は判明しておらず、約50%で両側性に発生し(その大半は1年以内に発生)、ステロイド性(全身性エリテマトーデス患者等)では、約70%が両側に発生し、8~10%の患者で大腿骨頭以外に、上腕骨頭、大腿骨下端等に発生する(寺山和雄他編著「標準整形外科学」・医学書院発行)。
(8) 請求人は、昭和62年2月23日(請求人20歳時点)に初めて厚生年金保険の被保険者資格を取得しており、それより前に同保険の被保険者となったことはない(資料4)。
2 前記認定された事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 請求人は、昭和58年12月2日、G病院を受診して本件全身性エリテマトーデスと診断された後、現在に至るまでステロイド剤の継続投与を受けているところ、昭和63年12月24日、左大腿部の痛み等を訴えてF病院を受診して左大腿骨頭無腐性壊死と診断され、平成元年及び同3年に人工股関節置換術の施行を受けている。
(2) 本件傷病と本件全身性エリテマトーデスとの間の相当因果関係について、E医師は現在のところ不明であると申述し、C医師は相当因果関係があると申述しているところ、請求人に係る骨頭壊死の発症部位は、当初は左大腿骨頭であったものが右大腿骨頭、さらに、両上腕骨頭におよび、本件傷病は、両側性・多発性の骨頭壊死発症の特徴を有していること、また、本件傷病の原因・誘因は明らかでないが、請求人は、昭和58年12月から本件全身性エリテマトーデスの治療のために、ステロイド剤を長期連用していることが認められ、これらのことを前記1の(7)の医学的知見に照らしてみると、請求人の場合、本件傷病はステロイド性の蓋然性が高いと判断するのが相当である。